母なるアップルウォッチ

心理学

 家に帰って手を洗う。ハンドソープをつけて20秒、シャコシャコと入念に。「お見事です!」と褒めてくれるのは、ママでもなければパパでもなく、おじいちゃん、おばあちゃん、お隣さんでもない。手首に佇むアップルウォッチだ。

 アップルウォッチは誰よりも私をみている。脈拍を測り、動きや音を感知して私の状況を把握する。運動をすると褒めてくれるし、睡眠が足りないと心配してくれる。時にはイライラを感知して(なのか?)深呼吸をするように提案してくる。どんな時もアップルウォッチに注目されながら生活をしている。

 『注目』は偉大だ。人間の行動や習慣を変える力がある。心理学の行動療法理論に基づく、子どもと良い関係を築く技法の一つにも、この『注目』が用いられている。子どもは様々な行動をとるが、注目された行動は繰り返すし、注目されなかった(無視された)行動はだんだん減っていく。だから、悪い行動に注目するのではなく、良い行動にたくさん注目をして褒めてあげて、子どもの良い行動を増やすことで親子の関係を良くしましょうという、簡単にいうとそういった技法だ。

 大人だって同じだ。注目されて褒められたら嬉しい。普通であれば手洗いなんて、10秒もシャコシャコしたら十分満足してしまう。注目され、褒めてもらえるからこそ20秒もシャコシャコできるのである。一駅ぐらいだったら歩こうと思えるし、夜更かししないで早く寝ようかなとも思う。アップルウォッチさんに育ててもらっている。

 今後アップルウォッチさんには、水回りの掃除をしたら褒めて欲しいし、パズドラへの課金は無視して欲しい。

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