故郷に錦と税金と

日常

 ふるさと納税の期限が迫っている。そろそろどこに寄付をするかを決めなくてはならない。だけど何だか気が重いところもある。どこか品性に欠ける気がするのだ。

 ふるさと納税というのは、地方間の税収格差を是正するために始まった、自分の居住地以外の自治体に寄付という形で税金を納める制度である。寄付をした分は居住地に払う住民税から控除される。例えば、地方から上京してきた人が、東京都ではなく自分の故郷に税金を納める、ということができる。遠くにいても故郷を思う、心温まる制度だ。

 ところが実情は少し異なる。まず、この制度では自分の故郷に限らずどこの自治体にでも寄付することができる。そして、寄付をした自治体からは返礼品が贈られてくる。返礼品は、その土地の名物や特産品などで、寄付する自治体によって異なる。例えば、兵庫県神戸市だったら神戸牛、秋田県にかほ市であればお米(あきたこまち)といった具合である。寄付といっても、寄付した分だけ住民税が安くなるので(正確には2000円は自己負担)、少額の自己負担分だけで返礼品をもらえるお得な制度である。

 となると、返礼品の豪華な自治体に寄付をしたくなるのが人間である。自分の故郷や応援する自治体に寄付をするという人は少数派になる。各自治体も、税収を得るために必死で魅力的な返礼品をこしらえる。血眼である。

 心温まる制度のはずが、自治体が国民に媚びへつらい、税収をかけて他自治体と返礼品で競い合うという、資本主義爆発のイベントになっている。品性に欠ける気がするし、悲しい気持ちになる。競い争うというのは成長のために必要なこともあるかもしれない。だが、特産品や名物がなかったとしても、故郷は故郷だ。誰かと競うものではない。税収の格差の問題は別の方法で解消できないものか、と思ってしまう。

 そう思いつつ、私もまた品性に欠けた顔で返礼品を選んでいる。北海道紋別市のホタテがいいか、佐賀県伊万里市のシャインマスカットか。どれもおいしそうで迷ってしまう。故郷の母にも送ってあげたい。

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