絶叫ディズニーランド

日常

東京ディズニーシーへ行った。

 ディズニーはすごい。ディズニー映画をほとんど見たことがない私が行っても、園内をスキップして歩きたくなるくらい楽しい。スタッフの対応も丁寧だ。園内だったら何が起きても助けてもらえる、そんな安心感がある。私がプレイセラピーで小さな部屋に必死に作る枠組みを、ディズニーさんは園内全体に作っている。只者ではない。

 安心感の話をしたが、園内には安心とは程遠いスポットもある。絶叫マシンだ。なぜ、絶叫マシンがあるのだろうか。理解に苦しむ。絶叫マシンは急発進、急旋回、急降下する。私達人間が乗っているのを忘れていないだろうか。その運転は乗客に失礼なのではないかと思う。人を絶叫させるためのマッシーンなのだ。

 さらに不思議なことに、あのホスピタリティ溢れるスタッフのお姉さん達も、来園者が絶叫マシンに乗ることを止めない。「この乗り物は乗客に失礼なのでやめた方がいいですよ」とは教えてくれない。止めないどころか、笑顔で列の誘導までしている。不思議だ。絶叫マシンに親族が捕まっているのかもしれない。どこまでも卑劣なマッシーンである。

 そんなわけで、私はこの絶叫マシンとは距離を置いて生活してきた。だが、今回は一緒に行ったパートナーが、センターオブジアース(絶対に叫ぶマシン)に乗りたいと言い出したのだ。「もちろん乗ろう」。見栄を張って強がるのが男である。悲しい。

 妹を人質に取られた(と思われる)スタッフのお兄さんが慣れた様子で列を誘導する。謎の洞窟をクネクネ進む。死刑台に送られている気分である。列に並びながらスマホで、「絶叫マシン 怖くない乗り方」で検索する。安全バーをきつく下げ、足を踏ん張り、背筋を伸ばし、腹筋に力を入れる。これが大事なようだ。ふむふむなるほど。

 パートナーにバレないように、並びながら何度かリハーサルをしてみる。ダメだ。怖い。だがもう覚悟を決めるしかない。乗り込むマシンが見えてきた。口数が少なくなる。怖い。

 マシンに乗り込むと容赦なく出発する。足を踏ん張り、背筋を伸ばし、腹筋に力を入れる。足を踏ん張り、背筋を伸ばし、腹筋に力を入れる。道中なんだか色々出てきたが、よくわからない。パニックである。足を踏ん張り、背筋を伸ばし、腹筋に力を入れる。左手は添えるだけ。終盤に一気にスピードが上がり、そのまま急降下。どこまでもどこまでも落ちていく。ように感じる。

 気がつけばマシンは減速していき、とまる。終わったのだ。思っていたより、大丈夫だった。正しい対策を知っていたのが、よかったのだろう。安心感に包まれる。

 恐怖に打ち勝つには正しい知識と具体的な対処を得ることが必要だ。ただし、わかっているだけでは難しい。実際にやってみて、「意外と何とかなるな」という体験が必要なのである。今回の件で絶叫マシンをある程度克服できたかもしれない。

 「意外と大した事なかったね」。震える足でパートナーに恐怖を克服したことを伝える。なぜか彼女は笑っている。『あなた、「怖い怖い!やめて!怖い!うわぁーーー!」って言ってたよ』と。

 怖すぎて記憶が飛んでいる。怖かった。

 

 

 

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